高橋牧場

祖父が襟裳岬の東側東洋地区でコンブ漁をはじめ、父の代で漁業との兼業で短角牛の飼育を始めたのが高橋牧場の始まりです。父が畜産を始めたころは、えりも岬周辺は森林の伐採などで「えりも砂漠」と呼ばれるほど丸裸の荒れた土地で、コンブも思うように採れない時代でした。短角牛を飼い、仔牛を出荷すれば出稼ぎに行かなくてもよくなり、厳しかった当時の生活を支えてくれました。その後、NHKのプロジェクトXでも紹介された、百人浜の緑化事業により大地は緑を取り戻し、海も豊かになりました。短角牛を飼育する牧野も広げられ、多くのコンブ漁師が兼業で短角牛を飼育していました。しかし、平成3年に牛肉の輸入が自由化となり、短角牛の畜産農家は厳しい状況に。町内でも多くの牧場が畜産をあきらめたり、霜降り肉が特徴の黒毛和牛飼育へ転換していき、現在町内で短角牛を飼育する牧場は私たちだけになってしまいました。

私たちが今、短角牛を飼育し続けているのは・・・。苦労していた先代への思いやそんな時代を共に乗り越えてきた短角牛への愛着、意地もあったのかもしれません。しかし、一番力になったのは、短角牛飼育を続けていくことを模索する中でたくさんの仲間と出会ったことです。仔牛生産から肥育までの一貫生産に切り替え、販路を探す中で出会った食の安全にこだわり、誇りをもって農作物を育てている生産者たち。スローフード運動と出会い、それに関わるたくさんの人たちからも今の高橋牧場の方向性を見出すために大きな影響を受けました。もちろん、私たちの肉を食べて美味しいといってくださる多くの消費者の方からもたくさんの勇気をもらっています。

たくさんの方に支えられていることに感謝し、これからの先の高橋牧場は・・・。短角牛がえりもの自然の中でより生き物としての牛らしく生きていける畜産と、より美味しく安全な牛肉作りに励んでいきたい。もっと多くの人たちに短角牛のすばらしさも伝えたい!支えてくれた人たちへの恩返しにできることをチャレンジしていきたい。まだまだやりたいことばかり。息子夫婦と短角牛と共に歩んでいきます!

高橋祐之